1941年(昭和16年)12月~1942年(昭和17年)①日本軍、開戦半年で東南アジアと南西太平洋のほぼ全域を占領下に置く
2023年4月28日第2次世界大戦
またここでは、海軍の中部・南部太平洋方面のポイントとなった地点を地図上に示した。広大な日本軍の戦線の一端を知ることができる。そして海軍の編制および航空隊について基本的な内容を一覧にした。また開戦初頭における海軍航空機の主力となった戦闘機・攻撃機等の写真も載せた。
(上写真)ラバウル港上空を飛ぶ零式水上観測機(出典)「決定版・写真太平洋戦争(第1巻)」「丸」編集部 編 潮書房光人社2015年 発行
ここでは、最初に海軍部の戦争構想、次に連合艦隊の第1段作戦の内容を記述する。海軍はこの作戦で、開戦初頭のハワイ奇襲、南方地域(比島、マレー、ジャワ)攻略、中部・南部太平洋方面攻略作戦を決定した。またこの作戦の基礎となった、連合艦隊の兵力部署の概要と連合艦隊の航空兵力定数を一覧にした。
海軍部の第1目的は、開戦初頭に南方地域(比島、マレー、ジャワ)を短期間で攻略し、すみやかに南方資源(石油資源等)を確保して長期戦に備えることであった。その理由は、海軍の主敵はアメリカ艦隊主力であり、戦争を始めれば、長期戦になる可能性が強かったからである。
だが南方攻略作戦を優先させると、アメリカ艦隊主力による早期の反撃を受け、南方作戦遂行そのものが困難に陥ると予想された。そこで連合艦隊は、開戦劈頭にハワイを奇襲しアメリカ艦隊主力に打撃を与えることができれば、南方作戦の完遂を早めることができると主張したのである。
(帝国海軍、対米英蘭戦争作戦方針の要旨)
●連合艦隊第1段作戦として以下が定められた。
比島(ひとう=フィリピン諸島)、マレー両方面から作戦を開始し、航空優勢を保持しながら航空基地攻略作戦を行い、航空兵力を進め、航空制圧下にジャワ島を攻略、また適時ビルマに進出する。
第1航空艦隊(空母6隻)基幹部隊は、開戦劈頭、在ハワイ米艦隊を奇襲してその勢力を減殺し、その西太平洋機動を制したのち、南方作戦を支援する。なお米艦隊主力が西太平洋に来攻する場合は、全力を挙げて撃滅する。
●陸海軍調整事項として、「南方作戦陸海軍中央協定」が結ばれた。
●同じく陸海軍調整事項として、「南方作戦陸海軍航空中央協定」が結ばれた。
(海軍)
●第11航空艦隊主力・・陸偵9機、艦戦108機、中攻144機、飛行艇18機。
●第3艦隊指揮下・・水偵約60機(初期約40機)、その他。
(陸軍)
●第5飛行集団・・偵察36機、戦闘36機、軽爆54機、重爆18機、その他。
(海軍)
●第22航空戦隊基幹(第11航空艦隊)・・陸偵9機、艦戦36機、中攻72機。
●南遣艦隊指揮下・・水偵約7機(初頭約20機)、その他。
(陸軍)
●第3飛行集団・・偵察72機、戦闘168機、軽爆108機、重爆99機とし、比島作戦概成後、第5飛行集団主力を当方面に転進させる。
(出典)「戦史叢書(海軍航空概史)」第4章航空部隊の開戦準備
作戦計画は、第1段作戦を3期に分け、第1期を比島攻略兵団主力上陸完了までとし、第2期をマレー攻略兵団主力上陸までとし、第3期を南方作戦の一段落までとした。下が、海軍の第1期の兵力部署の概要で、部隊名、主要兵力、主要任務などを一覧にした。
特に重要な兵力は、航空兵力で、第11航空艦隊は地上の基地航空戦隊が中心であった。特に開戦初頭の南方作戦の比島(フィリピン諸島)攻略戦は、台湾の基地から、マレー半島攻略戦は南部ベトナムのサイゴン周辺基地から、陸海軍の陸上攻撃機・爆撃機が敵航空機基地を壊滅させたのである。
部隊名(指揮官) | 主要兵力(主要任務) |
---|---|
主力部隊(連合艦隊司令長官・山本五十六大将) | 低速戦艦6隻基幹(全作戦支援、機動部隊収容) |
機動部隊(第1航空艦隊司令長官・南雲忠一中将) | 第1航空艦隊主力(空母6隻)基幹(ハワイ奇襲) |
先遣部隊(第6艦隊司令長官・清水光美中将) | 第6艦隊(潜水艦中心)(ハワイ方面米艦隊監視、追躡、奇襲、機動部隊の作戦に協力)(開戦初期は機動部隊指揮官の一時指揮下) |
南洋部隊(第4艦隊司令長官・井上成美中将) | 第4艦隊基幹(南洋方面警戒、グァム、ウェーク攻略) |
南方部隊(第2艦隊司令長官・近藤信竹中将) | (南方要域攻略) |
(主隊)(第2艦隊司令長官) | 高速戦艦、重巡各2隻基幹(南方作戦全般支援) |
(航空部隊)(第11航空艦隊司令長官・塚原ニ四三中将) | 第11航空艦隊(基地航空部隊中心)主力(比島方面航空作戦) |
(比島部隊)(第3艦隊司令長官・高橋伊望中将) | 第3艦隊基幹(比島進攻) |
(馬来部隊)(南遣艦隊司令長官・小沢治三郎中将) | 南遣艦隊、重巡5隻、第22航空戦隊基幹(マレー、ボルネオ北西部進攻) |
(潜水部隊)(第6潜水戦隊司令官) | 潜水艦2隻(比島作戦協力) |
北方部隊(第5艦隊司令長官・細萱戊子郎中将) | 第5艦隊(北方方面警戒、機動部隊援護) |
通信部隊 | 通商破壊隊 |
(注)第2期、第3期の兵力部署は、南方部隊に、第3艦隊司令長官を指揮官として、第3艦隊を基幹とする蘭印部隊を加えて、主要任務を蘭印攻略とし、比島部隊の兵力を激滅するものであった。(比島に第3南遣艦隊新設の予定)
(出典)「戦史叢書(海軍航空概史)」第4章航空部隊の開戦準備
●上左から零式艦上戦闘機、九七式艦上攻撃機、九九式艦上爆撃機。2段目左から九六式陸上攻撃機、一式陸上攻撃機、零式水上観測機。3段目左から二式水上戦闘機、零式三座水偵、九七式輸送飛行艇。海軍では急降下爆撃用の飛行機を「爆撃機」と呼び、陸軍では爆弾で攻撃する飛行機全体を「爆撃機」と呼んでいた。 |
下が各艦隊に所属した航空戦隊、航空隊の航空機の機種別定数である(常用、補用の合計で輸送機は除かれている)。またニ座水偵には観測機も含まれている(このページのトップの写真は零式水上観測機である)。
●種類(略称)と定数は、艦戦(艦上戦闘機)361機、艦爆(艦上爆撃機)144機、艦攻(艦上攻撃機)200機、中攻(中型陸上攻撃機)324機、飛行艇48機、陸偵(陸上偵察機)22機、水偵(水上偵察機、二座140機、三座105機)、潜水艦搭載機6機、総計1346機(?)であった。二座は(2人乗り)、三座は(3人乗り)のことである。
艦隊名 | 戦隊名・構成・航空兵力定数 |
---|---|
連合艦隊直率 | 第1戦隊(戦艦2)二座水偵各2。 |
連合艦隊直率 | 第24戦隊(特巡2)三座水偵各1。 |
連合艦隊直率 | 第11航空戦隊(水上機母艦)(千歳・瑞穂)二座水偵各16。三座水偵各4。 |
連合艦隊直率 | 第4潜水戦隊(軽巡1)三座水偵1。 |
連合艦隊直率 | 第5潜水戦隊(軽巡1)三座水偵1。 |
第1艦隊 | 第2戦隊(戦艦4)二座水偵各2。 |
第1艦隊 | 第3戦隊(高速戦艦4)二座水偵各3。 |
第1艦隊 | 第6戦隊(重巡4)三座水偵各2。 |
第1艦隊 | 第1水雷戦隊(軽巡1)三座水偵1。 |
第1艦隊 | 第3水雷戦隊(軽巡1)三座水偵1。 |
第1艦隊 | 第3航空戦隊(空母2)(鳳翔)艦戦11、艦攻8。(瑞鳳)艦戦16、艦攻12。 |
第2艦隊 | 第4戦隊(重巡4)二座水偵各2、三座水偵各1。 |
第2艦隊 | 第5戦隊(重巡3)二座水偵各2、三座水偵各1。 |
第2艦隊 | 第7戦隊(重巡4)二座水偵各2、三座水偵各1。 |
第2艦隊 | 第8戦隊(重巡2)二座水偵各2、三座水偵各2。 |
第2艦隊 | 第2水雷戦隊(軽巡1)三座水偵各1。 |
第2艦隊 | 第4水雷戦隊(軽巡1)三座水偵各1。 |
第3艦隊 | 第16戦隊(重巡1)二座水偵2、三座水偵1。(軽巡2)三座水偵各1。 |
第3艦隊 | 第5水雷戦隊(軽巡1)三座水偵1。 |
第3艦隊 | 第6潜水戦隊(潜母1)三座水偵1。 |
第3艦隊 | 第2根拠地隊(特水空母1)特設水上機母艦・二座水偵8。 |
第3艦隊 | 第12航空戦隊(特設水上機母艦2)(神川丸)二座水偵8、三座水偵4。(山陽丸)二座水偵6、三座水偵2。 |
第4艦隊 | 練習巡洋艦1・三座水偵1。 |
第4艦隊 | 第19戦隊(敷設艦1)三座水偵1。 |
第4艦隊 | 第7潜水戦隊(潜母1)三座水偵1。 |
第4艦隊 | 第24航空戦隊(千歳空)中攻36、戦闘機36。(横浜空)飛行艇24。 |
第4艦隊 | 第3根拠地隊(16空)二座水偵4、三座水偵8。 |
第4艦隊 | 第4根拠地隊(17空)三座水偵6。 |
第4艦隊 | 第5根拠地隊(18空)二座水偵6、三座水偵6。 |
第4艦隊 | 第6根拠地隊(19空)二座水偵8、三座水偵10。 |
第4艦隊 | 附属(特水空母1)二座水偵8、三座水偵4。 |
第5艦隊 | 第21戦隊(軽巡1)三座水偵1。(特水空母1)三座水偵8。 |
第5艦隊 | 第7根拠地隊(父島空)三座水偵6。 |
第6艦隊 | 練習巡洋艦1・三座水偵1。 |
第6艦隊 | 第1潜水戦隊(潜水艦3)小型水偵各1。 |
第6艦隊 | 第2潜水戦隊(潜水艦2)小型水偵各1。 |
第6艦隊 | 第3潜水戦隊(潜水艦1)小型水偵1。 |
南遣艦隊 | 練習巡洋艦1・三座水偵1。 |
南遣艦隊 | 第9根拠地隊(特水空母1)二座水偵8。 |
第1航空艦隊 | 第1航空戦隊(赤城、加賀)艦戦各21、艦爆各21、艦攻各30。 |
第1航空艦隊 | 第2航空戦隊(蒼龍、飛龍艦戦各21、艦爆各21、艦攻各21。 |
第1航空艦隊 | 第4航空戦隊(龍驤)艦戦16、艦攻18。 |
第1航空艦隊 | 第5航空戦隊(翔鶴、瑞鶴)艦戦各21、艦爆各30、艦攻各30。 |
第11航空艦隊 | 第21航空戦隊(鹿屋空)中攻72。(一空)中攻48。(東港空)飛行艇24。 |
第11航空艦隊 | 第22航空戦隊(美幌空、元山空)中攻各48、(附属)戦闘機36、陸偵6。 |
第11航空艦隊 | 第23航空戦隊(高雄空)中攻72。(台南空、三空)戦闘機各60、陸偵各8。 |
(出典)「戦史叢書(海軍航空概史)」第4章航空部隊の開戦準備
ここでは「12/8特殊潜航艇によるハワイ攻撃とアメリカ西海岸への潜水艦攻撃」と「12/10、海戦史を変えた航空機による戦艦プリンス・オブ・ウェールズ撃沈」について記述した。
軍(方面) | 軍司令官 |
---|---|
南方(総軍)(「軍」を束ねた。総司令部はベトナムのサイゴン) | 総司令官・寺内寿一(てらうち-ひさいち)陸軍大将 |
第14軍(フィリピン攻略) | 本間雅晴(ほんま-まさはる)中将 |
第15軍(タイ・ビルマ方面) | 飯田祥二郎(いいだ-しょうじろう)中将 |
第16軍(蘭印攻略) | 今村均(いまむら-ひとし)中将 |
第25軍(マレー半島・シンガポール攻略) | 山下奉文(やました-ともゆき)中将 |
第23軍(支那派遣軍)(香港と九龍半島) | 酒井隆(さかい-たかし)中将 |
南海支隊(グアム島攻略) | 支隊長・堀井富太郎(ほりい-とみたろう)少将 |
日付 | 内容 |
---|---|
12/10 | 第14軍(司令官・本間雅晴中将)ルソン島上陸。グアム島攻略部隊、同島占領。ギルバート攻略部隊、タラワ・マキン島占領。 |
12/10 | 海軍第22航空戦隊中攻隊、イギリス戦艦プリンス・オブ・ウェールズ、レパルス撃沈(マレー沖海戦)。 |
12/11 | 海軍南洋部隊ウェーキ島攻略部隊、アメリカ軍機などの攻撃で駆逐艦疾風・如月を撃沈され、一時撤退。12/23午前、第2次攻略作戦成功。 |
12/13 | 第23軍、九竜半島を占領、香港島のイギリス軍に降伏勧告するがヤング総督拒否。 |
12/19 | 第25軍(司令官・山下 奉文中将)第5師団のペナン支隊、イギリス軍撤退でマレー半島西部ペナン島を無血占領。 |
12/20 | 第16軍(司令官・今村均中将)坂口支隊・海軍陸戦隊など、フィリピン、ミンダナオ島のダバオを占領。 |
12/22 | 第14軍主力部隊、ルソン島のリンガエン湾上陸。 |
12/24 | 第11軍、中国第2次長沙作戦開始。長沙城外で国民政府軍の包囲攻撃を受け、1942年1/15撤収。 |
12/25 | 香港島のイギリス軍降伏。第23軍、香港を占領。 |
12/27 | アメリカ極東軍司令部、マニラの非武装都市(国際法により攻撃が禁止される)を宣言。 |
12/28 | 南機関とタキン党のアウン・サン(アウンサンスーチーの父)ら、ビルマ独立義勇軍を組織。(1943年8月バー・モー独立宣言) |
12/31 | 第25軍侘美支隊、マレー半島東岸のクワンタンを占領。半島を横断してクアラルンプールへ向かう。 |
12/31 | インドのモハン・シン大尉ら、マレー半島のタイピンでインド国民軍(INA)を創設。 |
部隊(戦隊等) | 艦種別・艦名等 |
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①哨戒隊(機動部隊に編入され、哨戒隊として前方の警戒を行った。) | 潜水艦3隻●伊19潜・伊21潜・伊23潜。 |
②先遣部隊(第1〜第3潜水戦隊) | 潜水艦20隻●伊9,15,17,25潜。伊1,2,3,4,5,6,7潜。伊8,68,69,70,71,72,73,74,75潜。 |
③特別攻撃隊(特殊潜航艇5隻) | 潜水艦5隻に搭載●母艦・伊22潜・伊16潜・伊18潜・伊20潜・伊24潜。 |
海軍第4艦隊を主力とする「南洋部隊」は、中部・南部太平洋方面攻略作戦を実施する。グアム島占領12/10。タワラ、マキン島占領12/10。ウェーキ島占領12/23。陸軍南海支隊と共同でラバウル占領(1942年1/23)。そして3月東部ニューギニアとブーゲンビル攻略へと向かう。そして5月、日本軍はポートモレスビー攻略作戦を実行し、それを阻止しようとするアメリカ軍と、珊瑚海海戦(空母対空母)で激突する。
※上地図のトラック諸島(=現チューク諸島)のモエン島とあるのはウエノ島(旧名・春島)のことで中心島、その南にダブロン島(旧名・夏島)があり、海軍第4根拠地隊司令部が置かれた。トラック諸島は海軍の一大拠点であった。
※上地図でクワジャリン島とあるのがクェゼリン環礁のことで、潜水艦基地(第6潜水艦基地)がおかれ第6根拠地隊も置かれた。他の6ヵ所の赤丸は南洋支庁が置かれた場所で、日本の委任統治領である。
※黒の星型は占領地などで、大きな赤の星型は攻防戦、大きな青の星型は海戦を示した。
海軍第4艦隊は、南洋諸島の防衛任務を担当していた。この南洋諸島というのは、日本が第1次世界大戦後、赤道以北の旧ドイツ領を、国際連盟から委任統治領として正式に統治下においてきたもの。南洋諸島は、マリアナ諸島、カロリン諸島、マーシャル諸島、パラオ諸島があり、日本は1922年4月から、パラオ諸島コロール島に南洋庁を設置した。そしてサイパン島、パラオ諸島(コロール島)、ヤップ島、トラック諸島(=チューク諸島)のDublon島(ダブロン島=旧夏島)、ポナペ島(=ポンペイ島)、ヤルート環礁(ジャルート環礁=Jaluit Atoll)のJabor(ジャボール)の6カ所に支庁を置いた。コロール島にはパラオ支庁も置かれていた。パラオ、トラック、サイパン、クェゼリン環礁(クェゼリン島とロイ=ナムル島)などには海軍根拠地隊が置かれていた。
●そしてこの南洋部隊は、水上艦基地としてトラック諸島、潜水艦基地としてクェゼリン環礁を活用して、南部フィリピン・グァム島・ウェーキ島・ギルバート諸島・東ニューギニア・ビスマーク諸島・ソロモン諸島への攻略作戦を実施していった。
●1月下旬、ハワイ作戦で活躍した空母赤城を旗艦とする機動部隊(空母加賀、空母瑞鶴、空母翔鶴など)は、R作戦(ビスマルク諸島攻略、特にラバウル攻略を意味する)を支援し、ラバウル、カビエン、ラエ、サラモアを空襲し連合国を圧倒した。2月にはオーストラリアのポートダーウィンを空襲する。そして3月半ばまでは、ジャワ島周辺の近海で敵の艦隊、商船、タンカーなどを撃沈、拿捕を行っていた。そして4/9蘭印軍が降伏し、ジャワ全土の攻略が終了した。
●3/26、機動部隊はインド洋上にある英艦隊を撃滅するため、スターリング湾(スラウェシ島南東岸)を出撃した(セイロン島奇襲作戦)。
●一方アメリカ海軍も、空母部隊による日本軍基地への攻撃を行い、2月にはギルバート諸島のマキン島、マーシャル諸島のウオッゼ、クェゼリン、マロエラップ、ミレ、ヤルートなどの要地を攻撃した。つづいて2/20にはラバウル、2/24ウェーキ島、3/4には南鳥島を攻撃した。
山本長官は、日本がハワイを攻撃できたのだから、アメリカも日本本土を攻撃できると判断し、本土防衛のための戦略としてもミッドウェー作戦を提案したのである。
●これに対して大本営海軍部は強く反対した。だがその時、日本本土が爆撃されたのである(ドーリットル空襲4/18)。この衝撃により、ミッドウェー作戦は陸海軍あげての重要作戦となった。そして並行してアリューシャン列島西部の攻略作戦も本土防衛のため同一作戦とされた。
●海軍は5/1、ポートモレスビー(オーストラリアと米軍の基地)攻略(MO作戦)のため、セイロン沖海戦に参加した第5航空戦隊(空母翔鶴・瑞鶴主力)を南洋部隊に編入し(MO機動部隊)、ツラギ攻略と同時にトラック島から珊瑚海に向かわせた。一方アメリカ軍は、暗号解読により日本軍のポートモレスビー攻略作戦を察知し、空母ヨークタウンと空母レキシントンを主力とする第17機動部隊を編成し、珊瑚海へ向かわせた。そして5/4、アメリカ機動部隊は日本軍のツラギ上陸を知り、攻撃を加えた。
●5/7、アメリカ機動部隊は日本軍のポートモレスビー攻略部隊の輸送船団(南海支隊)と護衛の小空母祥鳳を発見し攻撃を加えた。祥鳳は沈没し、輸送船団は北方に退避した。
●こうして日米の機動部隊は互いに索敵機を飛ばし5/8黎明についに激突した。この珊瑚海海戦でアメリカ軍は空母レキシントンが沈没、空母ヨークタウンは大破し、日本軍は空母翔鶴が中破し航空機93機を失った。この海戦では、日本軍は戦術的には勝利したが、戦略的にはポートモレスビー攻略が挫折したので、敗北と同等であった。この結果、ポートモレスビー攻略は延期となり、代わりに特殊潜航艇(3隻)による要地攻撃が計画された。5/30からのオーストラリア・シドニー港襲撃である。だがこの攻撃は失敗した。
月日 | 内容 |
---|---|
1/23 | 海軍南洋部隊と陸軍南海支隊、ニューブリテン島(オーストラリア委任統治領)のラバウルに上陸、占領した。 |
2/1 | アメリカ機動部隊、マーシャル諸島を攻撃。開戦後初のアメリカ軍の反攻。 |
2/3 | 海軍第2航空戦隊、ポートモレスビーを初空襲。 |
2/9 | 海軍スルミ攻略部隊、ニューブリテン島の中南部のスルミ(半島)とガスマタに上陸。スルミ飛行場を占領。 |
2/19 | 機動部隊と第21航空戦隊の爆撃機など、オーストラリアのポートダーウィンを空襲する。 |
2/24 | 伊17号潜水艦、アメリカ・カリフォルニア州サンタバーバラのエルウッド油田を14センチ砲で砲撃。 |
3/4 | ハルゼー指揮の米機動部隊(空母エンタープライズなど)の艦載機40機、南鳥島を攻撃する。 |
3/4 | 二式大艇(飛行艇)2機によるハワイ空襲作戦(K作戦)実施する。爆撃は成功したが、米軍によれば被害はなかった(爆弾は山中と海中へ落下)。 |
3/8 | 陸軍南海支隊と海軍陸戦隊、東部ニューギニアのラエ、サラモアを占領する。 |
4/5 | 海軍ラバウル方面防備部隊、アドミラルティ諸島とソロモン諸島ブーゲンビル島攻略(~11日) |
4/5 | 機動部隊、インド洋に進出。セイロンのコロンボを空襲、イギリス巡洋艦2隻を撃沈。 |
4/18 | アメリカ空母ホーネット発進のB25爆撃機16機、日本本土を初空襲(ドーリットル空襲)する。 |
4/23 | 海軍南洋部隊、ポートモレスビー、ナウル、オーシャン(ギルバート諸島バナバ)、ツラギ各島の攻略実施を下命。 |
4/28 | 連合艦隊、ミッドウェー・アリューシャン作戦計画を策定。関係部隊に示達。 |
5/1 | 連合艦隊、旗艦大和でミッドウェー作戦図上演習を実施(~4日) |
5/3 | 海軍陸戦隊、ソロモン諸島ツラギに上陸、占領。 |
5/5 | 大本営、大海令18号により、連合艦隊にミッドウェー・アリューシャン西部要地の攻略を発令。 |
5/7~8 | 珊瑚海海戦。日米機動部隊初の航空戦。 |
5/9 | 大本営、南海支隊にポートモレスビー攻略一時延期を指示。小空母祥鳳沈没、空母翔鶴が中破したため。 |
5/18 | 大本営、連合艦隊にニューカレドニア・フィジー・サモアを攻略する作戦(米豪遮断作戦)実施を発令。 |
5/23 | 大本営、南方軍の第2師団と内地の第7師団に、ハワイ上陸作戦の訓練実施を指示する。 |
5/27 | 第1機動部隊、柱島泊地(山口県岩国市)を出航。ミッドウェー作戦開始。 |
●空母レキシントンは総員退去して海没処分を受け沈没した。5/8、18時ごろである。
(映像出典)「秘録太平洋全史」日本映画新社 1975年製作
※(YouTube動画、サイズ2.8MB、1分)
ここでは、年表は1941年(昭和16年)12月16日以降のみを記入した。ページ末に1942年(昭和17年)1月10日大本営連絡会議における「情勢の進展に伴う当面の施策に関する件」を書いておいた。『昭和2万日の全記録』講談社を中心に要約引用した。
年・月 | 1941年(昭和16年)12月 |
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1941年昭和16年12/16 |
戦艦「大和(やまと)」竣工
●広島県呉海軍工廠で建造中の戦艦大和が、基本計画着手から7年をかけて12/16竣工し、第1艦隊に編入された。全長263m、最大幅38.9m、公試排水量6万9100トン、最高速力27ノット(=時速約50km)、46センチ砲9門(46センチ×45口径=2070センチ、20.7mの砲身の長さ)、乗員約2500人で世界最大の戦艦の誕生であった。 |
1941年昭和16年12/16 |
物資統制令公布施行
●生活必需物資統制令を廃し、より包括的な統制への政府権限強化を企図する。また同日、国民徴用令を改正、医療関係者徴用令各公布施行。これにより徴用範囲の拡大・被徴用者家族の保護充実を図った。 |
1941年昭和16年12/19 |
言論・出版・集会・結社等臨時取締法公布(12/21施行)
●集会・結社など全てが許可制になる。これは、戦争遂行の妨害や非協力を行う結社や言論の全てを禁止するために制定されたものである。前提は不許可であり、既存の団体にも、30日以内の許可申請を義務づけた。出版物への取り締まりも強化され、造言飛語、人心惑乱事項の流布への処罰も規定された。 |
1941年昭和16年12/30 |
ガンジー指導者を辞任
●インド国民会議派が対英戦争協力を決議したことに対して、ガンジーは、非暴力不服従運動を主張して指導者を辞任する。 |
1941年昭和16年12/31 |
初詣用の省電、終夜運転を中止する
●東京鉄道局は、例年実施の初詣用省電と成田山詣用臨時列車の終夜運転を中止した。私鉄、地下鉄、市電も同調した。 |
昭和17年1月10日大本営連絡会議、「情勢の進展に伴う当面の施策に関する件」を決定。前ページで引用した「対米英蘭蔣戦争終末促進に関する腹案」に基づいて以下の施策を強化することを決定した。
情勢の進展に伴い昭和16年11月13日決定の「対米英蘭蔣戦争終末促進に関する腹案」に基き差当(さしあた)り左記施策を強化す
1、米英等の敵国
米英等の敵国に対しては国内に厭戦気分を醞醸(うんじょう)し以て継戦意思を喪失せしむるに努む
之が為特に作戦と呼応し各種宣伝を強化す
2、印度
英米との交通遮断竝(並)に対英協力の拒否及び反英運動の積極化を目標とし作戦の進展に伴い逐次施策を強化す
本施策は大本営之に任じ関係各機関之に協力す
3、濠州(「ニュージーランド」を含む)
南方作戦の進捗、英米との交通遮断等対濠重圧の態勢を強化しつつ濠州を英米の覇絆(きはん=人の行動を 拘束し、妨げとなるもの)より離脱せしむるに努む
本施策は大本営之に任じ関係各機関之に協力す
4、南米諸国
南米諸国に対しては此等諸国をして実質的に中立を維持せしめ、為し得れば枢軸国側に接近せしむるを目標とし工作の重点を「アルゼンチン」、「ブラジル」及「チリ」の3国に置く之が為「スペイン」、「ポルトガル」及羅馬(ローマ)法王庁をも利用す
5、蘇(ソ)連
日蘇間の静謐(せいひつ=静かであること)を保持すると共に蘇連と米英との連繋の強化を阻止し、為し得れば之を離間するに努む
6、泰(タイ)国
日泰両国軍の共同作戦を必要とする時期に至らば米英に対し宣戦セシム
(註)
(1)第1項及第4項に関しては特に独伊と密に提携施策するものとす
(2)本施策は現下の作戦に即応せしむるものとし之が実施に関する大綱は連絡会議の了解を経るものとす
(3)印度及濠州に対する最後的処理に関しては別に定む